釧路湿原(くしろしつげん)の面積は約260k㎡、山手線内の面積の4倍以上もある日本最大の湿原ですから、湿原を見渡す展望台は11か所もあります(一般観光客が入れて景色がよい場所のみ)。
そこで、皆さんの目的に合った展望台を選びやすいように、全11か所の展望台の特徴を紹介します。
例えば、湿原全体を見渡したい、夕日の湿原を見たい、電車が走る湿原を見たい、湿原を手軽に見たい、こんな目的の方はぜひ参考にしてみてください。
釧路湿原の概要
2万年前の釧路湿原は陸地でしたが次第に海面が上昇し、40kmほど内陸部まで海水が入り込みました。4千~6千年前には次第に海水が引き始め、土砂や泥炭を残しながら3千年前に現在の形になっています。
東部にあるシラルトロ湖、塘路湖(とうろこ)、達古武湖(たっこぶこ)などはその名残で、海跡湖だそうです。
釧路湿原の地形 出典:環境省ウェブサイト釧路湿原国立公園より引用
釧路湿原の80%は低層湿原です。ざっくり言うと水中の泥炭部に根を張ったヨシやスゲなどの茎や葉が水面に出ているような状態です。また湿地に強いハンノキなども多いようです。
ヨシとハンノキ 出典:環境省ウェブサイト釧路湿原国立公園より引用
これらの植物が枯れて何年も堆積されると水面より高くなり、高層湿原と呼ばれる状態になります。北海道では枯れた植物の分解が進みづらいので堆積するようになり、高層湿原では栄養が少なくても育つ水コケやツルコケモモなどが中心になります。
湿原の代表的な植物の一つとして、通称「ヤチボウズ」があります。下の写真のように、緑色の部分がスゲ類の新芽、茶色い部分が昨年以前に枯れたスゲ類の葉が折れ曲がり、腐らずに残っている状態です。ちょっとかわいい形ですよね。
ヤチボウズ 出典:環境省ウェブサイト釧路湿原国立公園より引用
北海道以外でも見られますが、北海道は特に気温が低く枯れた葉が分解されづらいため、達古武湖や温根内の遊歩道では大きなヤチボウズや群生が見られるようです。
私は霧多布湿原が好きでよく行っていますが、湿原センター近くの「やちぼうず木道」でも見ることができますよ。
釧路湿原が見える展望台ランキングと特徴
釧路湿原が見られる展望台11か所のうち9か所は実際に行ったことがありますので、感想とともに個人的好みでランキングとおすすめ度(★★★☆☆など)も表示しました。
【注意】展望台へ行く道や木道が台風や増水していたり、改修工事中だったりして通行止めになる場合があります。また近くで熊が出ると立ち入り禁止になりますので、訪問する前には公式サイトで確認することをおすすめします。
1.細岡展望台 ★★★★★
おすすめしたい方:釧路湿原全体を見たい方、湿原に沈む夕日を見たい方、階段を上りたくない方。
細岡(ほそおか)展望台は湿原の中央東側にあり、最も広い範囲を見渡せますし、釧路川が蛇行している様子も見ることができます。
細岡展望台より 出典:釧路総合振興局ウェブサイト「くしろ風光フォトグラフィ」より引用
東側に位置しているため、個人的には逆光にならない午前中をおすすめしますが、湿原に沈む夕日が見られる場所でもありますので、夕日好きの方は夕方に行くのもおすすめです。タイミングが合えば、釧路川に夕日が反射して、川だけが浮き上がる感じでとっても美しいですよ。
細岡展望台より 出典:釧路湿原国立公園連絡協議会ウェブサイトより引用
また、駐車場から展望台までは500mほどの緩やかな登りですが、階段は1段もありませんので階段が苦手な方や車いすの方でも大丈夫、どなたにもおすすめできる必須ポイントです。
ビジターズラウンジでトイレに寄りつつ、展示物を見ながら湿原成り立ちや歴史を10分ほど学んでおくとより楽しめます。
- 駐車場:55台ほど。車いすの方はビジターズラウンジ前に駐車可能です。
- トイレ:ビジターズラウンジの建物内にあり。売店や軽食コーナーもあります。
- 注意点:駐車場から展望台方面に歩いていくと、階段を上ったところに細岡展望広場があります(下記の写真、当時の視界は良かった)。こちらでも一応湿原は見えますが夏場は木に遮られてあまり視界が狭くなっているかもしれません、ここで引き返さずに100mほど先の細岡展望台まで行ってください。
釧路駅方面から行く場合は国道391号を走り、達古武湖(たっこぶこ)方面へ右折してください。右折ポイントには「細岡展望台入口」の看板もありますし、有名な場所なのでナビに従って走れば大丈夫です。
2.釧路市湿原展望台 ★★★★☆
おすすめしたい方:楽に釧路湿原全体を見たい方、階段を上りたくない方、長く歩くのも避けたい方。
湿原の南西部にあり、建物に登って釧路湿原を見ることができる唯一の場所です。建物の1階はショップやレストラン、2階は展示室、3階が展望施設、屋上も展望施設です。エレベーターがありバリアフリーなので階段が苦手な方や車いすでも大丈夫です。
釧路市湿原展望台 出典:釧路総合振興局ウェブサイトより引用
2階以上は480円ほどかかりますが展望台からの眺めはきれいですし、最もお手軽に湿原の様子を見ることができるので時間があまりない方にもおすすめです。
ここには外に木道があり、その先のサテライト展望台から望む釧路湿原も絶景なので次項で説明します。
- 駐車場:108台ほど。車いすの方は駐車場入口手前の専用スペースに駐車可能です。
- トイレ:建物内にあり。売店やレストランもあります。
- 注意点:展望台と展示室は有料。
釧路駅方面から行く場合は道道53号を走れば道沿いにあります。有名な場所なのでナビ通り走れば大丈夫です。
3.サテライト展望台 ★★★★★
おすすめしたい方:釧路湿原全体を見たい方、木道を歩くのはOKだけど階段を上りたくない方。
釧路市湿原展望台を起点とした木道内にありますが、異なる名前が付いているので分けて記載しました。木道の展望台は無料です。
キツイ階段を上ることなく高い位置から広い湿原を見ることができるのはありがたいです。林の中の木道を一周できますが、おすすめコースは右回りでサテライト展望台まで行って引き返すルート、往復2kmほどです。
サテライト展望台 出典:釧路総合振興局ウェブサイト「くしろ風光フォトグラフィ」より引用
わりと平坦で大きな段差も無くバリアフリーなので車いすやベビーカーも大丈夫ですが、ちょっと狭い部分もあるので気を付けてください。
上の写真は湿原の南側、下の写真は湿原の北側になります。
木道を一周する場合は2.5kmほどのコースになりますが、南側に階段があったり高低差が結構あるのでアップダウンがキツイです。
下図は木道マップです。とっても分かりやすいし見やすいので「クスリ凸凹旅行舎」様のウェブサイトより一部抜粋して引用させて頂きました。オリジナルマップだそうです。マップは左側に続いていますので、全体を見たい方はウェブサイトをチェックしてみてください。
下図の釧路市湿原展望台Pから右回りで①サテライト展望台まではバリアフリー、左回りは階段があることを示しています。
釧路市湿原展望台木道マップ 出典:釧路湿原&阿寒の自然ガイド《クスリ凸凹旅行舎》ウェブサイトより引用
- 駐車場:釧路市湿原展望台と共通で108台ほど。
- トイレ:釧路市湿原展望台の建物内にあり。
- 注意点:夏場は蚊がいるかも。
4.サルルン展望台 ★★★★☆
おすすめしたい方:湖沼群を見たい方、釧路湿原を走る電車を見たい方、急な階段も苦にしない方。
サルルン展望台は釧路湿原の北東にあり、湖と4つの沼群を見ることができます。
下記写真の左が塘路湖、手前からサルルン沼、ポン沼、エオルト沼、その右がマンク沼(木の陰で見えていない)。展望台の50mほど手前から見たほうが視界が広くておすすめです。
塘路湖は細長い湖なので、湖全体を見渡すには長手方向の端から眺めたいところですが、サルルン展望台は絶好のポジションにあり、とっても美しい湖の姿を見られます。
また、沼と湖の間には釧網(せんもう)本線が通っており、電車の姿を見ることもできます。1日7本、往復14本くらいの電車が通りますので、早朝や夜を除いても10本くらいは見られそうです。
サルルン展望台より 出典:たびらいウェブサイト「サルルン展望台」より引用
なお、SL列車が走るのは冬場の特定の日のみ(おもに2月)。雪の山道ですが鉄道ファンで賑わうようです。
欠点としては、駐車場から展望台までが遠いこと。結構急な階段を上る必要があるので、運動不足の方はつらいかもしれません。
- 駐車場:7台程度。
- トイレ:簡易トイレが1つだけありますが、事前に済ました方が良い。
- 注意点:盗難注意・熊出没注意の看板があります。しっかりカギをかけて車上荒らしと熊に注意してください。
5.サルボ展望台 ★★★☆☆
おすすめしたい方:湖沼群を見たい方、釧路湿原を走る電車を見たい方、急な階段も苦にしない方。
サルボ展望台は釧路湿原の北東の高台にあり、サルルン展望台の隣です。塘路湖や沼群を眺めることができますが、夏場は木が下側の視界を遮るため最も手前のサルルン沼は見えないかもしれません。
こちらも沼と湖の間には釧網(せんもう)本線の電車を見ることもできますが、欠点はやはり急な階段を上らなければならないことです。駐車場と登り口はサルルン展望台と同じで、途中で分岐します。
- 駐車場:7台程度(サルルン展望台と同じ場所です)。
- トイレ:簡易トイレが1つだけあります。
- 注意点:盗難注意・熊出没注意の看板があります。しっかりカギをかけて車上荒らしと熊に注意してください。
6.コッタロ湿原展望台 ★★★☆☆
おすすめしたい方:釧路湿原の北側を見たい方。
湿原の最も北側に位置していますが、さらに湿原の北側を見るための展望台です。こちらも階段を上る必要がありますが、それほど急でもなく長くもないので大丈夫です。
階段の途中で道が分岐しており、数十メートルほど南側に歩けば湿原の南側も見ることができますが、最近は木が生い茂ってきているため夏場は視界が悪いかもしれません。
コッタロ湿原展望台は道道1060号沿いにあります。この道路は湿原の北側を横断する形で走っていますので、大自然を感じることができる道です。また、釧路川沿いを走ったり、橋を渡る場所もあるので、釧路川の様子を間近で見ることもできる楽しい道です。
ただし、環境保護の観点から舗装せずダート道が多くなっています。前の車に近づきすぎるとホコリまみれになるので車間距離は十分確保してください。
さらに、道幅は狭く無いもののダート道なのでセンターラインはありません。対向車とすれ違う場合はお互いに多少よける必要がありますが、路肩が弱い場所もあるようなのであまり端に寄りすぎないよう注してください。
なお、道道1060号をさらに北へ向かうと道路脇にコッタロ第2展望地があります。釧路湿原の看板と1台ほどの駐車スペースがありますが、木の陰になるため視界はかなり狭いです。
その先にはコッタロ第3展望地もあります。4台ほどの駐車スペースがあり、高台へ登ればよい景色が見られるらしいのですが、うっそうとした草や木々をかき分けて登らなければならず、冒険者以外の方にはおすすめできません。
- 駐車場:15台程度。
- トイレ:あり。
- 注意点:盗難注意の看板があります。車上荒らしに注意してください。
7.温根内ビジターセンター展望テラス ★★★☆☆
おすすめしたい方:釧路湿原内の木道を散策しながら植物や鳥、動物などを探したい方。高台から湿原を見なくてもよい方。
温根内ビジターセンターを起点として釧路湿原内を散策できる木道が整備されています。下の写真のような感じなので、湿原内の様々な植物やタンチョウ、シカ、野鳥などに出会うこともあります。
展望テラスといっても高台ではないので湿原全体を見渡せるわけではありませんが、最も近くで湿原を感じられる場所です。
温根内木道 出典:釧路・阿寒湖観光公式サイトより引用
木道マップは下図のような感じで、緑色の部分が木道です。オレンジ色の部分は湿原の一部なので、私が歩いたときは、ふんわりクッションを感じる場所があって楽しかったです。
展望テラスは⑦と⑧の間なのでちょっと遠くなりますが、周囲の木が無くなって視界が開けるのが展望テラスより先になります。
温根内木道マップ 出典:釧路湿原&阿寒の自然ガイド《クスリ凸凹旅行舎》ウェブサイトより引用
- 駐車場:50台程度(道道53号沿い)。ビジターセンターの隣は車いす専用のみです。
- トイレ:ビジターセンター内にあり。入館は全エリア無料です。
- 注意点:似たような景色が続くので子供は飽きるかも。ビジターセンターは火曜休館日です。
8.二本松展望地 ★★★☆☆
おすすめしたい方:蛇行する釧路川を近くから見たい方。
道路わきの斜面を登った海抜40mほどの場所にあり、湿原と釧路川を近くから見下ろせるポイントです。展望台の設備は何も無く見通しが良い場所があるだけなので展望地と呼ばれています。
サルルン・サルボ展望台の近くで、ここからコッタロ湿原展望台へ向かう場合は道道1060号を走り、釧路川に架かる二本松橋を渡る200mほど手前の場所に駐車場があります。
バイクの方はさらに50mほど手前に道がありますので、そこを登れば展望台のすぐ近くまで行くことができますよ。車で行けるかもしれませんが、おすすめはしません。
- 駐車場:5台くらい。
- トイレ:無し。コッタロ湿原展望台のトイレを使用してください。
- 注意点:展望台は砂地です。ハイヒールは履かないほうが良いかも。
9.北斗展望地 ★★☆☆☆
釧路市湿原展望台から道道53号を北へ600mほど走ると広い駐車スペースがあり、ここから釧路湿原を見ることができます。以前はとても視界が良くて湿原を見渡せましたが、手前に林があるため現在では夏場になると視界は狭まっています。
- 駐車場:30台くらい。
- トイレ:無し。
- 注意点:夏場は木の陰で下側の視界がいまひとつ。
10.夢ヶ丘展望台
釧路湿原と釧網本線の電車を見るための展望台。線路の直線部分が長く続くので、鉄道ファンの方には人気がありそうです。
夢ヶ丘展望台より 出典:釧路・阿寒湖観光公式サイトより引用
達古武(たっこぶ)オートキャンプ場の駐車場から2.3kmほど歩く必要があり、運動不足の私は展望台まで行く勇気が無くて木道の入り口で引き返しました。
- 駐車場:36台くらい。達古武オートキャンプ場の駐車場を使用してください。
- トイレ:無し。達古武オートキャンプ場のトイレを使用してください。
- 注意点:往復5kmほど。
11.新夢ヶ丘展望台
釧路川が蛇行し、流れる方向が180度変わる様子が見られます。釧路川の手前には線路があり、蛇行した釧路川と電車の光景は人気になりそうです。
アクセス方法は線路沿いを歩いて行くのかもしれませんが、柵もないので列車が来ると非常に危険な感じがします。鉄道ファンの間では秘境として知られているようですが、私にとっては登山レベルだと思い断念しました。
まとめ
- 湿原の全景を見たい方:①細岡展望台 ②釧路市湿原展望台 ③サテライト展望台。
- 湿原を走る電車を高台から見たい方:④サルルン展望台 ⑤サルボ展望台 ⑩夢ヶ丘展望台。たどり着くまでがちょっと大変です。
- 蛇行する釧路川を見たい方:①細岡展望台 ⑧二本松展望地 ⑩夢ヶ丘展望台。
- 湿原内を散策したい方:⑦温根内ビジターセンター展望テラス。
- 湿原に沈む夕日を見たい方:①細岡展望台 ⑤サルボ展望台(熊注意)。
- 湿原の北側を見たい方:⑥コッタロ展望台。
- 道路脇から軽く湿原を見たい方:⑨北斗展望地。
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